そこには使えなくなったロッキングチェアーが一脚。
ゴミにも出せずに放置されていた。
小さい頃、私は決まって天気の良い日にその場所で
産まれてくるはずだったお姉ちゃんと待ち合わせをした。
「お姉ちゃんはお空の上にいるんだよ」という母の言葉を信じ込み、
ロッキングチェアーの上で体育座りをして雲の隙間を一生懸命探していた。
それはかくれんぼのようで私はとても楽しかった。
私が見つけられなくても、お姉ちゃんはきっと私のことを見つけているに違いないと思い、
その時その時、覚えたての歌をお姉ちゃんに歌ってみせた。
今思えば決して眺めの良かった場所ではない。
けれど、上しか見ていなかった私はそこから見える真っ青な空の色、真っ白な雲の色が
とてもキレイだったように記憶している。