大学2年の夏、
初めて自分で交通費・滞在費を工面して
一人で9日間の東京へ建築巡りの旅に出かけました。
東京は様々な時代の建築が残っている魅力的な街です。
そして東京に着いてまず向かったのが
1927年に竣工した『九段下ビル』。
東京に発つ直前、
一部解体のニュースを耳にしていたので
最初に観に行こうと決めていました。
現地に着いて見ると、
周囲には新しくキレイなオフィスビルが立ち並ぶ中、
九段下ビルは古くボロボロで明らかに周囲から浮いていました。
九段下ビル1階の「喫茶カリーナ」に入ると、
都会のサラリーマンで賑わっていました。
そこに混じって大学生はオムライスを注文します。
このときふと感じた
「一人で東京に来たんだ」という
疲れと、喜びと、寂しさと、不安が入り交じった様な感情は
この写真を見る度に思い出します。
そしてこの冬、
九段下ビルは一部ではなく全て解体されることになり、
もう二度と姿を見ることは出来ませんが、
あの時見た不思議な空間と気持ち、
一人で食べたオムライスの味は
ずっと忘れません。