「貴女は本当に可愛いね。」
お風呂あがりに父から髪をとかしてもらっていたことや、母と一緒に昼寝していた午後のことなど、小さな頃の思い出には、必ず両親からのこんな言葉が響いてくる。
年齢を重ねて、「可愛い子だね。」→私たち親にとっては。という但し書きがついていたことがわかるようになり、少しがっかりもしたこともあったが、「かわいい。かわいい。」と育てられたその温かい記憶は、太く張り巡らさせた根っこの一部になって私を支えている。
縁あって今、私は小さな娘を育てている。
ある日、お友達とのケンカの果て「不細工!」と言われたと憤慨して学校から帰ってきた彼女。
ふむふむ・・と彼女の話を聞きながらふと尋ねてみたくなった。
「それで、貴女は不細工だと思う?」と。
すると
「お母さんもお父さんもお姉ちゃんもいつも私のこと、かわいいって言うもん。お洋服だって髪型だって、お母さんがいつも可愛くしてくれているもん。毎朝、可愛いってお母さん言うもん。
だから私不細工じゃないって知ってるから大丈夫。」
と、言いたいだけ言ってしまうと、満足した彼女は大きくうなづいて宿題にとりかかった。
私は彼女の
根っこになれるだろうか。