学校からは都庁が見えた.夕陽に照らされる新宿ビル群.そこから見下ろされる下町に,母校はあった.
いつの間にか仲良くなっていた親友に,今日は一緒に帰れない事を告げる.いつも彼はふーんとだけいった.ボロボロの鞄を手に取り颯爽と教室をあとにする彼を見送り,隣の教室へと歩を進める.
一緒に帰ろうなんて言葉を飲み込み,友達と談笑している彼女がいる教室に徐にはいっていく.友達の目配せでこっちに気付いて,じゃーねと言って学校を出る.
新宿・渋谷が近い学校からの帰り道は,都会の雑音とは切り離された,古い住宅街の裏通り.先生が,先輩が,友達が,テストが,そんな話をうんうんとききながら,二人の影法師はオペラシティへと向かう.商店街を抜けると,ぬっと現れる淡いピンクのオペラシティ.テニスコートとデニーズを横目に,ピンクの塔の麓へと階段を上る.
まばゆいオレンジの空を背景にして,街並の切り絵が広がる.目を凝らすと,ぽつんと佇む富士山の影.今は無きその影は,今日もどこかで夕陽に照らされている.